2016年9月17日土曜日

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二〇一六年九月十七日土曜日


そのひとには、三人のこどもがいた。しずかな愛のひとである兄、お喋りで彼女によく似た弟、やさしさの外側できもちが波うってしまう妹。

せっかちで、落ち着きがわるく、「じっとしてなよ」と都度言われていた彼女。

冬に遊びに行くと、外の段ボールの中からみかんを出して「食べな。」と言い、食べているとおせんべいを盛った皿を出しながら「こんなんしかないけどー」と言ってケケっと笑い、また台所へ。
兄弟はいつでもすこしあきれたように彼女にそう言った。
「もういいから。じっとしてなよ。」

そんな会話をよく聞いた。

聞き役の兄はそんなことはなかったけれど、弟と妹は彼女と喧嘩をした。歳を重ねても喧嘩をよくしていた。いっしょに暮らしていた妹とはとくに。口喧嘩の末、彼女は近所に住む長男の家に家出したりした。

それでもふりかえったとき、彼らに写る彼女はやさしい母、だった。
妹はちいさく、でもしっかり伝え涙を流す。「怒ってばかりいてごめんね。ありがとう。」


そして口下手な旦那がいた。家事には非協力的、頑固が故聞く耳を持たなかったりした。晩年別の部屋で過ごす時間も増えていた。

彼女の手をさする彼すべてから愛が伝わった。だれよりもなんどもタオルで目元をふき、あたまを抱えていた。
みているだろうか、彼女は。



三人のこどもは力を合わせて協力した。お互いを思い、父を思い、そして母を思いながら。
彼女は三人のこどもに恵まれ愛されつづけた。それは彼女の成し得たものであり、宝。


(わたしはなぜだか涙は出なかった。ごめんなさいとありがとう、それから言ってもらった言葉を思い返したりしていた。)

それぞれが彼女を見つめながらどんな思いを話し、どんな風景を思い浮かべていただろう。

彼女はどんなきもちでいるだろう。


おーい、聞こえているかな。
あなたを思っているよ。
彼らの声がどうか届きますように。
そしてあなたの声が彼らに届きますように。


夜ごはんの記録はなし。

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